講演1 がんと漢方薬

講師 柳澤 紘

医学博士、漢方専門医、
クリニックやなぎさわ 院長


講演2 がんでは死なせない―最先端の免疫治療とは―

講師 阿部博幸

医学博士、トーマス・ジェファーソン大学客員教授
国際個別化医療学会 理事長

 

≪講義メモ≫:

 

≪講演1≫

・漢方薬と中医学(中国の医学)の薬とは違う。

 

・現代医学(西洋医学)は体をピンポイントで治療するが、
東洋医学は体全体を治療する。

 

・東洋医学では
①気、②血、③水、の3つのバランスで診断する。
病はこれら3つのバランスが崩れると生じる。

 

・漢方薬はがんの補助療法として行う。
がんを治す、小さくするのは不得意な療法。

 

・抗がん剤や放射線治療の副作用を緩和する効果があるものがある。

 

・漢方薬治療では
同病異治:同じ病だが、処方が違う。
異病同治:違う病であっても処方が同じ。
の場合がある。
⇒気、血、水の組み合わせで処方が決まるから。

 

・漢方薬治療では2種類以上の生薬を組み合わせて
一人ひとりに合った処方が行われる。

 

・漢方医の探し方:
日本東洋医学会のHPから専門医を探せる。
https://www.jsom.or.jp/jsom_splist/listTop.do

 

・保険が使えるのは次のとおり。
芝大門いまづクリニック 今津医師
がん研有明病院 漢方サポート科 星野医師

 

・Q&Aセッションから
Q;保険適用の有無で治療が違うのか?
A;保険制度の問題。
保険診療では生薬の品目数が制限されており、
購入金額も決められているために、
高品質な生薬の使用が実質的には不可能に近い。
自由診療のほうが広い範囲の材料が使える。

なので北里大学東洋医学総合研究所病院では自由診療としている。
保険診療の場合と治療に使う材料が違ってくる。
例えば、中国から輸入される材料は
最近高価になったため他の安価な材料を代替使用することが多い。

しかし中国から輸入するものを使う場合、保険診療にならない。


【補足】

講師は北里大学東洋医学総合研究所の部長を務めた経験がある。

そこのQ&Aは次のURLを参照。
 https://www.kitasato-u.ac.jp/toui-ken/center/qa/index.html 基本的なQ&Aがある。

 

≪講演2≫

 

・テーマ1で紹介された漢方薬治療は一人ひとりにあった治療を行うもの。
個別化医療と云えるものです。
これから紹介する免疫治療もこの個別化医療を実現するもの。

 

○がん治療の問題点

 

・いま日本では新たにがんになる人が増加している。

 

・しかし、がん治癒の成否は時期とどの治療を選択するかによって大きく異なる。

 

1)早期がんであれば生存率が高いが末期がんの場合は低い。

 

2)がん細胞は叩くほど耐性がつく。
抗がん剤は効かなくなる。

 

がん幹細胞に対する攻撃は免疫治療で可能

⇒慶応大学や大阪大学での研究で判明。

 

・現在の免疫治療は次のとおり。
CART療法、ペプチドワクチン、樹状細胞ワクチン、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体など。

 

●高い生存率を実現するには抗がん剤だけの治療よりも
コンビネーション治療が優れていることがコンセンサスになっている


講師のクリニックのコンビネーション治療はつぎのとおり。
(ABeVax:多価樹状細胞ワクチン療法)


①がん細胞を攻撃する治療:NK細胞と樹状細胞を使ったキラーT細胞

②がん細胞の抵抗を防ぐ治療:抗PD-1抗体治療(ニボルマブ、薬品名オプジーボ)

①について

・樹状細胞ががん目印をキラーT細胞に教えてがん細胞を攻撃させるための『司令塔』となる。
・樹状細胞は自然の血中にはあまり存在しない。
しかし少ない単球から増殖作成する技術を開発。

少量の採血で樹状細胞ワクチンが作れる。


・一人ひとりの治療のため(オーダーメイド)のワクチンができる。


・1クール5回。リンパ節付近に治療薬(ワクチン)を皮内注射する。

 

②について

・オプジーボ(ニボルマブ 抗PD-1抗体)を使った治療を行っている。


・1年間この薬を使うと約3500万円もかかるとの報告がある。高価な薬剤。

        (註)価格についてはその改善を求める批判がなされている。


講師のクリニックの治療では、人によって副作用があるため
少量投与から始めて副作用がなければ徐々に増量するようにしている

保険適用の治療では抗がん剤投与の後に処方する必要があるが、
そのようなことはせずに、
逆に免疫細胞(キラーT細胞)を
できるだけ増やした上で投与する(Q&Aより)

 

このコンビネーション治療は

 

・どんながんにも使える。
なぜなら、すべてのがんに合わせて治療薬を作れるから。


・どんなステージのがんにも使える。

 なぜなら実績がある。


・遠方の方でも治療が受けられる。
なぜなら、少量の採血で治療薬が作れるから。


・手術前後を問わず治療可能。


・がんの予防にもなる。

 

○治療実績(講師のクリニックの臨床データ)


:抗がん剤治療が効かなくなったいわゆる「がん難民」に対して行ったもの。

 

前立腺がん 有効率 55% プロベンジという米国で認可済のものより優れる。


肺がん 有効率 68.2% 1年生存後は生存継続


大腸がん 有効率 約60% 1年生存後は生存継続


すい臓がん 有効率 42.9% 完治者も3人いる。

 

・遺伝子レベルでがん治療する。

 

・局所だけでなく全身のがん治療に使える。

 

≪ Q&A ≫

 

1.似たような免疫治療があるが、
・アファレーシスが必要ない、
・人工抗原には独特のものを使用している。
 など名称が同じでも内容が違う

 

2.抗がん剤治療後でも治療可能。

 

3.ワクチンを解凍後使用すると細胞劣化になるのでやっていない。

 

4.免疫チェックポイント阻害剤にも副作用はある。例えば自己免疫疾患。

 

5.前出の臨床データは末期がん患者に対して行った治療結果。

 

6.局所温熱治療オンコハイパサーミアは何回やっても問題ない。

 

≪勉強になったこと≫

 

1.がんはひとりひとり違うのでそれに合わせた治療が必要だが、
漢方薬治療と多価樹状細胞ワクチン療法はそれを実現できる療法

 

2.オプチーボ(ニボルマブ)治療と標準治療とのコンビネーション治療と
 オプチーボ治療と多価樹状細胞ワクチン療法との

コンビネーション治療の違いが判明した。

 

3.免疫治療はがん幹細胞攻撃に有効、と判明していること