「粗食が良い」は大きな間違い、もっと肉を食べよう!

「肉にはコレステロールが多く、406854
魚は逆に中性脂肪下げるので健康によい」とか、
「少ない食事をすることが健康につながる」
とよく言われています。

年齢を重ねたら粗食の方が健康に良いと思っている方は
多いかもしれません。しかしそれは本当でしょうか。

しかし粗食も度を超すと不健康です。
なぜなら
動物性タンパク質や脂質の不足、
また肉類に含まれる鉄分や
ビタミンB12などの栄養素が不足するからです。

●ヘモグロビンの値が正常値を下回る

また、粗食を目指すことによって
特に高齢の方では食が細くなりがちなため、
むしろ栄養バランスを崩すことになり、
がんなどの問題になり得るのです。

日本では男女を問わず
65歳以上でHb 11g/dL未満を貧血としています。

ところが、その数値以下なのに
貧血に気づいていない人も多いようです。

●貧血に気づきにくい高齢者

普段の活動度が低いと、
貧血状態に体が慣れてしまい
無理な動き方をしなくなっているので
自覚症状がなかなかないのです。
例えば、自宅にずっといる高齢者、
特にご家族と同居していて
家事をする必要のない
超高齢者の方は、貧血に気づきにくいかもしれません。

平成26(2014)年度の国民健康栄養調査を見ると、
男女とも、60歳以降、年を重ねるに従って
貧血が増えて行きます。

高齢者では、貧血が慢性的に進行していて
自覚症状が出にくかったり、
日常生活での活動性が低下して
典型的な貧血症状(動悸や息切れなど)
に気づかなかったりしがちです。

ヘモグロビンの数値が正常値を大きく下回っていても
気づいていないのです。

また自覚症状があっても、
年齢的な体力の低下や、
心臓などの持病の症状が原因と
考えてしまうこともあります。

貧血の進行に伴い、
認知障害などの精神神経症状や、
狭心症などの循環器症状、
食思不振などの消化器症状などが
出てくることがあり、

高齢者の「なんとなく元気がない」
「だるい」「疲れやすい」などの
不定愁訴は貧血を鑑別に挙げています。

高齢者の慢性的な貧血は、
十分な量の赤血球を作れなくなっている状態であることが原因です。
その他の原因として、
がんなどの出血もあり得ますし、
老人性貧血として加齢変化のため
赤血球造血能が低下することもあります

日常的に気をつけていられるものとして、
十分な栄養素を摂ることが大切です。

しかし、赤血球を作るためには多くの栄養素が必要で、
特に鉄、ビタミンB12、葉酸が必要です。

栄養の吸収障害や摂取量の低下、
慢性出血(主に消化管出血)の結果、鉄が欠乏して
貧血になると考えられます。

●加齢とともに低下するビタミンB12吸収能力

葉酸欠乏
胃酸を抑える薬を長期服用している場合、
アルコール依存症
2か月以上の食事摂取低下が続くと
起こりやすくなります。

ビタミンB12の吸収能力は加齢とともに低下し、
胃酸を抑える薬を長期服用している場合も
欠乏しやすくなります。

成人男性の1日鉄分摂取必要量は推定で7mg、
月経のない女性は6mgが推奨されています
(日本人の食事摂取基準(2015年版))。

しかし75歳以上の1日平均鉄分摂取量は
男性で8.1mg、
女性で7.1mgと、決して低くはありません(国民健康調査)。
それでもやはり一部の高齢者では
栄養の偏りが多く見られると感じています。

例えば、鉄分は赤身の肉に多く含まれ、8c76c4354c9d0d0b947dc8f51e5d774c_s
またビタミンB12も肉類を中心に多く含まれています。
しかし、健康志向の中で肉類を摂らない人も増えています。

魚だけに偏ると、十分なタンパク質が摂取できない可能性が高くなります。

また独居もしくは2人暮らしの高齢者では
自炊ではなく出来合いの惣菜やお弁当などで食事をすませる方もあり、
栄養バランスのよい食事を摂るのは難しいのです。

貧血に限りませんが、
食事による栄養は、体を健康に保つうえで
必要不可欠なものです。

また貧血は、生命活動に不可欠な酸素を
全身の細胞に送り届けることができなくなってしまうため、
生活の質を著しく低下させたり、
また他の持病の症状にも影響を与えたりすることがあります。

今後、高齢者が増えていくなかで、
貧血や栄養の問題は注目すべき課題になると考えています。

出典:医療ガバナンス学会 記事を要約、加筆。