テーマ1 がん治療における緊急処置
講師 阿部みな子
米国緊急医療専門医 医療法人社団博心厚生会 副理事長
テーマ2 がんでは死なせない―最先端の免疫治療とは―
講師 阿部博幸
医学博士 国際個別化医療学会理事長
≪講義メモ≫:
≪テーマ1≫
・がんが引き起こすさまざまな緊急処置を要するケースについて紹介があった。
・ケースとして次が紹介された。
高カリウム血症、低ナトリウム血症、腫瘍崩壊性症候群
脊髄圧迫、脳転移・脳圧、胸水、腹水、心膜の悪性心のう液
上大静脈症候群、感染症(化学療法後)
・緊急処置に出合っていないものにとって勉強になった。
・最後の感染症については、がん治療の副作用だが、
ABeVax治療であれば発生しない。
正常細胞は攻撃せず、がん幹細胞も「やっつける」から。
≪テーマ2≫
・テーマ1ではがん治療の副作用への注意として重要。
・いま日本では新たにがんになる人は約98万人もいる。
・問題は
1)早期治療であれば取り除けるが、
痛みなく進行するので気づいた時には進行していることが多いこと。
早期がんの5年生存率は80%に対してステージⅣは20%前後と低い。
2)がん細胞は叩くほど耐性がつくこと。
⇒抗がん剤は効かなくなる。
・がんは多種多様。個々に違う。従ってひとそれぞれに(個別に)治療する必要がある。
このことからUS大統領オバマはプレシジョンメディスンの必要性を最近説いているが、
講師氏は10年前からその必要性を唱えている。(個別化医療)
・その意味でこれから紹介する免疫治療はこの個別化医療を実現するもの。
・がん幹細胞の攻撃は免疫治療で可能。抗がん剤治療や放射線治療ではできない。
・免疫治療は現在、第5世代の治療が行われている。丸山ワクチンは第1世代。
・第5世代治療には
CART療法、ペプチドワクチン、樹状細胞ワクチン、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体などある。
<最強の免疫治療は>コンビネーション治療
①がん細胞を攻撃する:NK細胞、樹状細胞を使ったキラーT細胞
②がん細胞の抵抗を防ぐこと:抗PD-1抗体治療(ニボルマブ、薬品名オプジーボ)
の両面を兼ね備えたもの
①について
・樹状細胞はがん目印をキラーT細胞に教えてがん細胞を攻撃させるための『司令塔』
・樹状細胞は単球から作れるが、これを増殖する技術を開発し特許を取得。
・ひとりひとりの治療が、樹状細胞ワクチンで可能になった。
・がんはひとりひとり違うがこれに対応できる仕組みを備えている。
②について
・抗PD-1抗体(ニボルマブ 薬品名はオプジーボ)を使った治療を行っている。
・肺がんとメラノーマについて認可されているがすべてのがんに効くもの。
・講師の治療では、人によって糖尿病の副作用があるため
10mg投与から始めて副作用がなければ20mgに増やすなど徐々に増量するようにしている。
この最強の免疫治療は
・どんながんにも効く。
なぜなら、すべてのがんに合わせて治療薬を作れるから。
・遠方の方でも治療が受けられる。
なぜなら、少量の採血で治療薬が作れるから。
・手術前後を問わず治療可能。
・がんの予防になる。
<治療実績(講師のクリニックでの)>
:抗がん剤治療が効かなくなっていわゆる「がん難民」に対して行ったもの。
前立腺がん 有効率 55% プロベンジという米国で認可済のものより優れる。
肺がん 有効率 68.2%
大腸がん 有効率 約60%
すい臓がん 有効率 42.9% 治療が非常に困難と云われているが完治者3人いる。
卵巣がん 有効率 約40% 12人生存
<がんに対する考え方>
『がんは恐くない』
恐いと思ったらいけない。
がんになっても「来たか」ぐらいの気持ちで仲良くする。(あまり叩かないということか?)
がんをなくす治療は必須。次の5つ:免疫治療、3つの標準治療、オンコハイパサーミア(温熱療法)
気力、体力がある人は治療が効く。アルブミンが多い人。
心理状態が前向きの人の方が長命という統計は正しい。
痛みを麻薬などで取り除くほうがいい。
・保険適用について
講師の免疫治療は再生医療として特定のがんについて厚労省の認可の可能性あり。
・樹状細胞ワクチン療法と一口にいっても様々なものがあるのでよく検討する必要がある。
○勉強になったこと
がんはひとりひとり違うのでそれに合わせた治療が必要。
がんの多様性に対応した治療として個別化医療の潮流に乗っているものと云える。
ニボルマブ治療方法についての説明を受け、
免疫治療を行うならその経験が長い医師が適当と感じた。
◆最強免疫治療 コンビネーション治療の概念図(講師クリニック資料による)