酒と一緒におつまみを食べ過ぎているのです。
お酒と肥満との関係について、ダイエット専門医院「渋谷DSクリニック」の林博之院長のお話。
■お酒“だけ”だとそんなに太らないかもしれないが…
「そもそもお酒を純アルコールとして換算すると、1g当たり7.1キロカロリーになりますが、このうちのおよそ70%は代謝で消費されることがわかっています。
これが『アルコールはエンプティカロリー』、すなわち『太らない』と言われる理由の一つです。
さらに同一カロリーを脂質や糖質でとった場合と比較すると、アルコール自体には栄養素がないために、体重増加作用が少ないと考えられています。
これらを踏まえると、純アルコールだけであれば、ほとんど太らないと言ってもいいのかもしれません。
■「酒と一緒におつまみを食べ過ぎているのです」
しかし適量を守ったとしても、現実には太ってしまう人のほうがはるかに多いのは何故だろうか?
その理由はごく単純で、「酒と一緒におつまみを食べ過ぎているんです」と林院長は指摘する。
「まずはビール」で始まり、その後は日本酒、ワイン、本格焼酎と続き、挙句の果てには「締めにラーメン」と“飲兵衛ゴールデンコース”をまっしぐらなんてことは常。
しかも、ラーメンは“背脂ちゃっちゃ”のとんこつ系で、チャーシュー&煮玉子などのトッピングを加え、スープまで平らげるとそれだけで2000キロカロリーを超えるものもある。
ここまでいくと、一杯目のビールから始まった夜の飲食だけで、かる~く 3000キロカロリー以上を摂取してしまうのである。
しかも「あとは帰って寝るだけ」という深夜にハイカロリーな料理を腹一杯まで食べれば、いくら酒量に気を使ってダイエットに励んでも、太って当然だ。
■遅い時間から始まる酒席は太りやすい?
お酒は楽しみたい、でも太りたくないと思うのならば、「1日の中でカロリーをトータルコントロールする」ことを食事で意識しながら習慣づけるといいそうだ。
「日常的にお酒を飲んでいる人は、とにかく『つまみを合算してカロリーコントロールすること』が鍵になります。
ただ、重要な注意点が一つ。食事は抜かず、1日3食とること。例えば朝食はフルーツ、昼は蕎麦などと、どちらも軽く抑えてもいい。ただ、朝を抜き、昼も軽 くするといったやり方はダメ。空腹時間が長くなりやすく、夜の飲食で“どか食い”“早食い”の原因になる。結果的にカロリーオーバーになりやすいのです」 (林院長)
特にどか食いに関しては、「遅い時間から始まる酒席は注意が必要」だと林院長は言う。
それを防ぐためにはサラダ、野菜スティックといった食物繊維が多く、低カロリーのものを酒席のはじめに食べておくと良い。体に吸収されるアルコールのス ピードを緩やかにしてくれるほか、カロリーの高いおつまみが胃袋に入る余地が狭まる。同時に、胃壁や腸壁をアルコールによる直接的なダメージから防いでく れる役割も期待できる。体にも優しいのだ。
■「塩辛い」「味が濃い」などのつまみは、お酒を進める原因に
つまみに関しては、「蒸す」「煮る」「焼く」「水煮」といった油を使わない調理法の料理が望ましい。例えば、枝豆、トマト、ワカメときゅうりの酢の物な ど、低カロリーの野菜や海草類、さらに湯豆腐、イカソーメンといった脂質が少なく、良質なたんぱく質を多く含むメニューがお勧めだ。
反対にお好み焼き、ピザ、餃子、ポテトサラダ、鶏の空揚げといった脂質と糖質を多く含む「ハイカロリー」のつまみは、中性脂肪を増やし、体重増加にもつながりやすい。
■9キロカロリーの余剰エネルギーは1gの脂肪になる
こうした“負のサイクル”を避けるためには、「2、3日を1つの単位と考え、その中で食事のリズムとサイクルを整えるように意識するといい」と林院長はいう。
この2~3日のサイクルをベースにした調整法は、忙しいビジネスパーソンにとっても、比較的簡単に取り組みやすい。
「まずは、自分の体重に一定の“基準”を設け、『毎朝、体重計に乗る習慣を身につける』ことです。毎朝の計測で設定範囲を超えたら、2~3日間は脂質、糖 質は極力控え、野菜と植物性たんぱく質を中心とした食事を心掛ける。太らずにお酒を飲み続けるためには、“脂肪の貯金”を貯めない習慣を身につけることが 欠かせないのです」(林院長)。
「1kgぐらいの増加なら、まあいいか」と自分を甘やかしていると、それはやがて脂肪という名の負の貯金となる。
もしもカラダの中で消費されない9キロカロリーの余剰エネルギーがあったとすれば、それは生理学的に1gの脂肪に変換されることを意味する。こうした「些 細なこと」が日々続けば、大きな蓄積となり、確実に体重は増加する。そうならないためにも、基準体重を指標にして、カロリーコントロールを心がける必要が あるわけだ。
「お酒が本当に好きで、一生飲み続けたいと思うならば、がんばれるはずですよね」と、林院長は笑う。
体重増加に伴う「尿酸値の悪化」「中性脂肪の増加」「血糖値の上昇」といった生活習慣病へと導かれる“負のスパイラル”を避けるため、そして生涯に渡って酒を楽しみ続けるためにも、「日々の地道な努力」が欠かせないのである。
Profile
林 博之(はやし ひろゆき)
渋谷DSクリニック渋谷院院長
医学博士。東京慈恵会医科大学卒業。東京厚生年金病院形成外科医長などを経て、2005年、医療痩身専門院の「渋谷DSクリニック」
を開設。同院の院長として10年を迎える、ダイエットの専門医。医学的根拠に基づいた、リバウンドのない正しいダイエットの啓蒙に努めている。
出典:日経Gooday