本格焼酎に秘められたパワーで「血栓」を撃退!?
「飲んでよし、嗅いでよし」。最適量はコップ1杯!
倉敷芸術科学大学生命科学部教授・学部長 須見洋行教授のお話
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以下は、記事の抜粋です。
「血栓」を溶解する働きが酒にはあるというデータが存在する。
酒が持つ血栓の溶解効果について、倉敷芸術科学大学生命科学部教授・学部長の須見洋行教授にお話を伺った。
■「芋焼酎」「泡盛」で血栓を溶解する物質が倍増!?
「血栓は血液中の血小板が凝集してできたものですが、そこに『フィブリン』と呼ばれる繊維状のタンパク質を引き寄せるために、強固な血液の塊になっていきます。正常な体(血管と血液)であれば、血栓の溶解に関わる酵素『t-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)』や『ウロキナーゼ』といった物質が血管内皮細胞から分泌されて、血漿(しょう)中に含まれる『プラスミノーゲン』という酵素に働きかけて、活性型の『プラスミン』というタンパク質分解酵素を作り出します。これが血栓を大きくしていく『フィブリン』を分解し、血栓を溶解していきます。」(須見教授)
「実は焼酎と泡盛にt-PAやウロキナーゼの分泌、活性を促す効果があることが実験でわかりました。『酒を飲まない人』と『本格焼酎』『泡盛』を飲んだ人で比べると、t-PAやウロキナーゼの活性は、実に倍近くになっていました」(須見教授)。
ここで言うところの焼酎とは、「乙類」といわれる、単式蒸留器で蒸留した昔ながらの本格焼酎を指す。芋、麦、米など、多くの種類の本格焼酎があるが、中でも須見教授が薦めるのは芋焼酎、そして泡盛である。
「24種類の焼酎で実験した結果、芋焼酎と泡盛の一部にt-PA、ウロキナーゼの分泌、活性を高めることが分かりました。残念ながら芋焼酎や泡盛に含まれるどの成分が、2つの物質の活性を促すのかは、まだ特定されていません。現在のところt-PA、ウロキナーゼはいずれも詳しい産生や分泌のメカニズムが分かっていません。ですが、2つの活性を促すのに最適だとされる量は、純アルコールに換算して1日に30ml程度であることが分かっています」(須見教授)本格焼酎で言えば、120ml程度。何事も“適量”が肝心というわけだ。
「健康効果を高める観点からいえば、ほんの少しお酒を飲み、ほろ酔いになるくらいがちょうどいい」と須見教授。いくら芋焼酎が良いからと言って、たくさん飲むほど血栓ができにくくなるというほど、都合のいいことにはならないらしい。
■酒の香りを「嗅ぐ」だけでも分泌を促す
さらに、芋焼酎と泡盛には、「飲む」ことに加えて、香りを「嗅ぐ」ことでも先のt-PAを活性化させることが、須見教授の実験によって明らかになったという。その秘密は、芋焼酎と泡盛が持つ特有の『香気成分』にある。
「芋焼酎には、バラの香りの主成分の1つであるβ-フェニルエチルアルコールをはじめとして、リンゴの香りに似たカプロン酸エチルなど、数多くの香気成分が含まれています。その中で、先のβ-フェニルエチルアルコールに、t-PAを有意に活性化させることがわかりました。つまり、芋焼酎の香りを嗅ぐことでも、血栓を溶解する効果が期待できるといえるのです」(須見教授)
確かに原材料の香りを生かした芋焼酎は、その良い香りを嗅ぐだけで、リラックスするという人も少なくない。香りを嗅ぐだけ良いとなれば、「芋焼酎は匂いが独特だから飲むのは苦手」という人にとっても朗報である。
■本格焼酎にはHDL(善玉コレステロール)を増やす効果も
今のところ様々なタイプのお酒を比較した試験は行われていないとのことだが、須見教授によれば「香りによるリラックス効果が何かしらで分泌や活性に影響していると、私は仮説を立てています。芋焼酎や泡盛だけではなく、香気成分が豊富なブランデーなどの蒸留酒のほか、香り高い日本酒といった醸造酒などにも、t-PAやウロキナーゼの分泌、活性を上げる効果があるかもしれない」と解説する。
「飲んでよし、嗅いでよし」の本格焼酎。須見教授は「芋焼酎と泡盛に限らず、そもそも本格焼酎にはHDL(善玉コレステロール)を増やす効果もある」と補足する。HDLはLDL(悪玉コレステロール)を血管壁でとらえて肝臓へ運ぶ役割を担うことで、心筋梗塞や動脈硬化のリスクを下げることが明らかになっている。加えて本格焼酎は糖質もゼロ。肥満を気にする人にとって、これほど最適なアルコール飲料はないのではなかろうか。
おいしさと個性で再び見直されている本格焼酎と泡盛。その大いなる健康効果にも注目したい。
Profile
須見洋行(すみ ひろゆき)さん
倉敷芸術科学大生命科学部教授、学部長
医学博士。1974年徳島大学医学部大学院修了、九州大学理学部科学(生化学)、シカゴマイケルリース研究所文部省在外研究員を経て、1982年宮崎医科大学生理学助教授、1997年より倉敷芸術科学大生命科学部教授・学部長。日本生理学会評議委員、日本血栓止血学会評議委員、通産省外郭団体JTTAS会長。納豆を主とする発酵食品の機能性、本格焼酎の成分が持つ線溶活性の研究の第一人者として知られる