腰痛の原因は「ストレス」だった!?

好みのストレス解消法を知り、家族・友人にもに伝えよう

パーソナルトレーナーの第一人者、中野ジェームズ修一のお話

 

以下はその抜粋です。

 

腰痛の原因が画像診断や精密検査で特定されなかった場合、

ストレスを取り除くことが腰痛の軽減に有効であるケースが多いということです。

 

■椎間板のヘルニアや変形があっても痛みが出るとは限らない

 実は画像診断で椎間板ヘルニアや椎間板の変形があった場合であっても、腰痛の原因であるとは限りません。腰痛の自覚がなくても画像診断をしてみると椎間 板ヘルニアと診断されたり、椎間板の変形が発見される人も多いのです。意外に思われるかもしれませんが、ヘルニアや変形があったとしても必ずしも痛みが生 じるわけではないということです。
 では、痛みが起きるヘルニアと痛みが起きないヘルニアの違いはどこにあるのでしょうか。その違いは、「側坐核(そくざかく)」の働きにあるとされています。
 痛みの信号が脳に届いたときに鎮痛物質を出すように指示する場所とされている側坐核の働きがストレスを受けて低下し、激痛を感じるようになるのです。椎 間板ヘルニアに関しても「痛みの約3分の2は心の問題である」という調査結果もあります(1995年スイス・チューリッヒ大学調査)。

 

■椎間板ヘルニアの多くは自然に治る!?

 

 そして、これも驚かれるかもしれませんが、椎間板ヘルニアの多くは、その軽度・重度に関係なく自然に治癒するといわれています。
 ヘルニアによって神経が炎症を起こすとマクロファージ(白血球の一種。強い捕食作用を持ち、体内の異物や死細胞を除去する)が分泌され、このマクロ ファージがヘルニアを異物として除去してくれます。病院の画像診断で椎間板ヘルニアが見つかったときに「ちょっと様子を見てみましょう」と言われるのはこ のためで、しばらくするとヘルニアがなくなり、自然治癒することがあるのです。
 椎間板ヘルニアが見つかっても必ずしも痛みが出るとは限らないこと、痛みが心因性である場合があること、椎間板ヘルニアは自然治癒する可能性があること。これらを知るだけでも腰痛との向き合い方が変わるのではないでしょうか。

 

■「ストレスを解消する方法を一緒に探す」

 

 私はクライアントから腰痛に関して相談をされることがあります。
 画像診断では特に問題がなく、痛みが起きた時期や最近のライフイベント(転職した、離婚した、引っ越ししたなど)の話を聞き、ストレスが原因の1つかも しれないと感じた場合、それをクライアントに説明します。そして、クライアントが納得してくれたら、ストレスを解消するための方法を一緒に探していきま す。

 

■腰痛の原因であるストレスを解消するには?

 

 では、腰痛の大きな原因であるストレスをどのように解消していけばよいのでしょうか。
 まずは「ストレスの原因を回避することが良くないことだと思う」ことを止めることが大切。「会社に行く」「学校に行く」がストレスで、それが体の不調の 原因と考えられるならば、回避することを考えて良いはずです。日本人の多くが頑張りすぎてしまう傾向がありますし、なかなか難しいことが多いのも分かるの ですが、転職や転校とまではいかなくても、部署異動の相談や席替えを頼むのは悪いことではありません。
 また、積極的な回避方法が見つかる場合もあるでしょう。例えば英語での会議に出ることがストレスになっているのなら、「英語を習って自信をつける」のがストレスをなくすことにつながるはずです。
 ストレスを発散するためにまず重要なのが、「自分は何をすればストレスを発散できるか」を知ることです。それは人によって違うもの。運動か、映画か、友人とおしゃべりすることか、おいしいものを食べることか。
 私がおすすめしたいのは、自分のストレス発散方法を家族や友人に伝えておくこと。というのも、ストレスを抱えてしまっている状態だと、自分でストレス発 散の方法が分かっていても、なかなか行動に移せないからです。元気なときに家族や友人とストレス解消法をシェアしておき、お互いにストレスが溜まっていそ うなときは誘い合う約束をしておくのも1つの方法だと思います。

 

<PROFIlLE>
中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん
フィジカルトレーナー/米国スポーツ医学会認定ヘルスフィットネススペシャリスト

卓球の福原愛選手など日本のトップアスリートだけでなく、高齢の方の運動指導も行う「パーソナルトレーナー」として活躍。日本各地での講演も精力的に行っている。近著に「なぜいくら腹筋をしても腹が凹まないのか」(幻冬舎新書)など多数。