「関節の痛み」にどう対処する?

こちらをクリック。

【要約】

65歳以上で要支援となった人の原因のトップは関節疾患だという。

関節のトラブルを防ぐために、気を付けるべきことや、最適な治療法について、

順天堂大学医学部整形外科主任教授の金子和夫医師のお話。

関節の痛み・腫れ、異変に気づいたら早めに受診を

変形性関節症は、40~60歳代で発症しやすい病気です。
頻度が高いのは膝ですが、股関節や脊椎、指関節にも起こります。

変形性関節症による痛みのメカニズムには大きく分けて2つのタイプがあります。
1つは骨と骨のつなぎ目にある軟骨がすり減ることによって痛みが生じるものです。
もう1つは、関節を包む滑膜(かつまく)が炎症を起こすタイプです。「関節水症」になることもあります。

軟骨の消耗は加齢が原因なのでしょうか。

股関節の場合は、先天的な股関節の形態異常が原因です。
膝関節については、多くの場合、加齢で軟骨が消耗し、
さらに、弱った関節に、肥満による体重負荷がかかることが主な原因となります。

関節の痛みや腫れというと関節リウマチの症状と似ていますが、見分け方はありますか。

金子 変形性関節症の場合は、主に膝や股関節など、症状が起こる関節が限定されています。
関節リウマチは全身性の病気なので、
左右対称に痛んだり、複数の箇所に同時に痛みが起きたりします。
リウマチでは、朝方にこわばり感が長く続くのも特徴です。
変形性関節症では骨棘形成も含めて骨は増える(強くなる)傾向にあります。
一方、リウマチでは逆に骨は減る(弱くなる)傾向にあります。

一度失ったら再生しない軟骨をいかに長持ちさせるか

保存的治療で改善しない場合は手術ということになりますか。人工関節は、体の中で老朽化しないか、合併症も心配です。

金子 主流は、骨切り術人工関節置換術です。

以前は40~50歳代前半の人には骨切り術が妥当だとする時代がありましたが、最近は材質が向上して摩耗が少なくなり、耐久年数が20年以上に延びました。これにより手術の適用年齢が下がりつつあります。50歳以上に行うことが多いのですが、重症の場合、40歳代でも実施する施設もあります。

市販薬やサプリメントは効果がありますか。

金子 最近は、ロキソプロフェン(商品名:ロキソニンほか)のような鎮痛剤が薬局で購入できます。

サプリメントについては、コンドロイチングルコサミンなど、さまざまな商品が流通しています。
また、薬やサプリメントには、「プラセボ効果」があります。

本当は効かないはずの薬でも、効くと思い込んで飲むうちに症状が改善するという効果です。
副作用が少ないのであれば、悪くもないでしょう。
しかし、中には誇大広告の商品もあるので注意が必要です。

将来的に期待される最先端の治療法はありますか。

再生医療に向けた取り組みとしては、
患者さん自身の軟骨組織を利用した細胞移植治療は国内外で行われつつありますが、
感染症や事故などの可能性も高く、
実用化には、まだ多くの課題が残されています。

再生医療は将来的に可能になるかもしれませんが、
再生することよりも予防への取り組みを強化する方がはるかに効率的であると思われます。


金子和夫(かねこかずお)さん

順天堂大学医学部・大学院医学研究科教授/大学院医学研究科スポートロジーセンター副センター長
1979年順天堂大学医学部卒業。