耳寄りな話です。
花粉症が完治する可能性のある治療法が成果を挙げています。
健康保険が使える。
花粉症は不治の病ではなくなるのか?

以下は、アレルギークリニック院長のお話です。

 

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今年もまたスギ花粉症の季節がやって来た。

 

 実はスギ花粉症は日本特有の病気。

 

花粉症という病気は世界中にあるが、
その原因となる花粉の種類は地域によって異なる。

 

日本の場合、「スギ」が圧倒的で、
「ヒノキ」も多い。世界では「イネ科植物」や「ブタクサ」による花粉症が多い。

 

日本の場合、戦後、
大量にスギを植えたことが原因でスギ花粉症が急増した

いわば、日本の国民病とも呼べる。

 

スギの木の成長に伴い、花粉量は年を追うごとに
増えており、患者数も増える一方だ。

 

東京都が3600人の都民を対象に行った
調査(2006年)によると、

 

全体の推定有病率は28.2%。
15歳~50代では30%を超えており、
3人に1人は花粉症に悩んでいた。

 

 花粉症が怖いのは、
一回発症すると毎年症状が出てしまうこと。

 

しかも「去年まで平気だった人も、
今年は発症する可能性がある

誰も安心できないということです」と、

 

ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック
(東京都品川区)院長の永倉仁史さんは話す。

 

 「アレルギー疾患の発症はコップに水を注ぐことに
例えられます。抗体(スギ花粉、ダニ、ハウスダストなど
アレルギーの原因物質に反応して体内で作られる物質)、

 

悪い食生活、ストレスなどの危険因子が少しずつ
コップにたまっていき、あふれたときに発症する。

 

一回あふれたら、抗原が入ってくるたびに
症状が出るようになります。

 

花粉症になる人とならない人がいるのは、
コップの大きさに個人差があるからです」(永倉さん)。

 

コップの大きさの個人差というのは、つまり体質の違いことだ。

 

抗ヒスタミン薬、点鼻薬は対症療法に過ぎない

 

 スギの花粉によって、なぜ鼻水やくしゃみといった
花粉症の症状が起こるのか。簡単に説明しよう。

 

(1)抗原(スギ花粉)が体内に入ると、
これを排除するための「IgE抗体」(正確には
抗原特異的IgE抗体)が作られ、
皮膚や粘膜にある肥満細胞にセットされる。

 

(2)再び体内に入った抗原が
肥満細胞についているIgE抗体と結合する。

 

(3)肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの
物質が放出される。

 

(4)くしゃみ、鼻水、せきなどのアレルギー症状が起こる。

 

 要するに、
スギ花粉に対するIgE抗体ができることが花粉症の原因
この抗体ができなければ、
スギ花粉をいくら吸い込んでも
アレルギー症状は
起こらない。

 

この抗体を作りやすい人が、
「アレルギー体質のある人」ということになる。

 

ある東京都の医学部の学生を調べたところ、
73%がスギ花粉に対するIgE抗体を持っていました。
そのうち半分くらいが実際に花粉症を発症していました。

残りの半分は、発症予備群というわけだ。

 

さらに、今はIgE抗体を持っていなくても、
来年はできているかもしれないという。
だから、「誰も安心できない」わけだ。

 

 花粉症に対してはアレルギー反応を抑える
抗ヒスタミン薬や点鼻薬がよく使われるが、
もともとこれは対症療法に過ぎない

 

症状を抑えるだけで、花粉症を治すわけではないのだ。
一回なったら毎年症状に悩まされるようになり、
薬を飲んでも完治することはない―。

 

つまり、
花粉症は発症したら最後、

一生治らない“不治の病”なのだろうか?

 

 「そんなことはありません。花粉症は治すことができる。
それが2014年から保険も適用されるようになった
舌下免疫療法です」(永倉さん)

 

薬代は1ヵ月1000円程度

 

 免疫療法とは、毒をもって毒を制する治療法。

 

アレルギー反応を起こす微量の抗原をあえて
体内に入れることで、体を慣れさせ、
アレルギー反応を起こさないようにするものだ。

 

減感作療法とも呼ばれる。

 

 なんだか二日酔いの迎え酒のようで乱暴な気もするが、
危険はないのだろうか?

 

「治験の結果、
13.5%の人に副作用がありましたが、
舌下粘膜のはれ、のどのかゆみなど軽いもの
ばかりでした」と永倉さん。

 

2016年12月時点で約6万1000人が
花粉症の舌下免疫療法を行っているが、

 

今のところアナフィラキシー(抗原に触れることで、
じんましん、くしゃみ、咳、嘔吐、唇の腫れなど、
複数の臓器で症状を起こすこと)のような
重大な副作用は1件も報告されていないという。

 

 具体的には、
シダトレン」(商品名)という
液体の薬を使う。
中にはスギ花粉から抽出した
抗原たんぱく質が入っている。

 

これを11回、舌の下に落とし、2分間じっとしている
基本的にはそれだけだ。

 最初は少ない量から始め、少しずつ量を増やしていく。

 

処方されるのは1回1カ月分なので、
月に1回通院することになる。

 

保険適用なので料金も安く、
永倉さんによると「薬代は1ヵ月分で1000円程度」だという。

 

1年以上続けると17%が「ほとんど症状なし」に

 

 舌の下に垂らすだけなので、痛くも苦しくもない。
毎日続けるのは面倒な気もするが、

考えてみれば1日にわずか2分。

歯をみがくよりもずっと短い。

 

いったん習慣になってしまえば、何でもないことだろう。

 

 特筆すべきは効果が高いことだ。
8割から9割の人が効果を感じています」と永倉さん。

 

この有効率は従来の内服薬よりもずっと高い。

 

 さらに、これまでの抗アレルギー薬では
不可能だった「完治」の可能性もある。

 

治験の結果、
1年以上続けた患者のうち17%が治った
(花粉症シーズン中にくしゃみ、

鼻水がほとんど出なかった)という。

 

 永倉さんは保険適用がスタートした
2014年10月から、シダトレンを使った
舌下免疫療法を始めた。

 

治療を始めて1年経たない患者でも、
「非常に良い」が40%、「やや良い」まで含めると
94%が効果を感じた。

 

1年以上続けると「非常に良い」が49%と、
ほぼ半数にまで増えていたという。

 

なお、治療を受けた期間が長いほど
再発を抑えやすい傾向があり、

治療は3年以上続けるのが望ましい
(永倉さん)という。

 

舌下免疫療法で90%以上の人に効果が

免疫治療の効果

治療を1年以上続けると「非常に良い」が49%と、ほぼ半数にまで増えた。 (データ出典:日経Gooday)

 

アレルギー反応を抑える細胞を増やす

 

 舌下免疫療法が
どのようにアレルギー反応を抑えるのか説明しよう。

 

 まず、なぜ「舌下」なのか?

 

 ここにはアレルギー反応を起こす肥満細胞が少なく、
樹状細胞という免疫細胞が多い。

 

さらに、すぐ近くに首のリンパ節があり、
多くの免疫細胞が集まっている。

 

 この舌下に抗原を落とすと、
樹状細胞が取り込み、その情報をリンパ節に送る。

 

するとIgE抗体と抗原の結合を邪魔する
IgG抗体が大量に作られる。

また、アレルギー反応を抑える免疫が増える。

 

その結果、アレルギー症状が起こらなくなっていくという。

 

 前述したように料金も安く、
今のところ深刻な副作用も報告されていない。

 

何といっても、「花粉症が完治する」可能性がある
ことは大きな魅力だろう。

 

永倉さんは「
ひどい花粉症に苦しんでいる方、
従来の薬に効果が感じられない方には
特にお勧めです
」と話す。

 

舌下免疫療法は登録医だけが行うことができる。

 

シダトレンを販売する鳥居薬品のホームページにある
「スギ花粉症に対する舌下免疫療法相談施設検索」
などを利用すると、簡単に近所の登録医を探せるはずだ。

 

 なお、抗原の花粉をあえて体内に入れる治療法なので、
すでに花粉が飛んでいるシーズン中に始めることはできない。

 

今年は従来の内服薬などで乗り切るしかないが、
シーズンが終わってから始めれば
来年以降に効果が期待できる。

 

気になる人は最寄りの医療機関に相談してみよう。

 

 

 

永倉仁史(ながくら ひとし)さん
ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック 院長

 

2006年より現職。
著書に『スギ花粉症は舌下免疫療法(SLIT)でよくなる!』(現代書林)、
『子どもの花粉症・アレルギー性鼻炎を治す本』(講談社)など。

 

出典:日経Gooday

http://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100018/021500046/?waad=abLZtgAl