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嫌な記憶を繰り返すのは
健康によくないとは多かれ少なかれ
わかっていたこと、
ではありますが、
それを心理学者が実証的に裏付けてくれています。

ここで紹介されている対策としての「他者視点での治療法」は
世によくある瞑想法やマインドフルネスに通じるもの。

ストレス社会を乗り切るための
漠然としたひとつの解決方法
提示されたわけです。

さきもりの会はがんというストレスに具体的に立ち向かうもの。

ここで示された対策法も駆使して
『ストレスを避ける生活』を目指しましょう。

さきもりの会と主催するNPO法人さきもり-私の記録については

こちらを参照ください

記事詳細は下記を参照ください。

 

「セラピストが教える 自分で心を手当てする方法」

嫌な出来事をリピートすると心の傷が悪化することへの対策

 

以下は、心理学者、セラピストの
ガイ・ウィンチ(Guy Winch, Ph.D.)さんのお話です。

ガイさんが著書で取り上げている7つの心の傷

  1. 「自分を受け入れてもらえなかったとき」――失恋、いじめ、拒絶体験
  2. 「誰ともつながっていないと感じるとき」――孤独
  3. 「大切なものを失ったとき」――喪失、トラウマ
  4. 「自分が許せなくなったとき」――罪悪感
  5. 「悩みが頭から離れないとき」――とらわれ、抑うつ的反芻(はんすう)
  6. 「何もうまくいかないとき」――失敗、挫折
  7. 「自分が嫌いになったとき」――自信のなさ、自己肯定感の低下

もっとも厄介で、そして多くの人が陥りがちなのが、
思考のループです。
心理学用語では「反芻」はんすう:英語でruminate)といいます。

反芻とは、直訳すれば、
何度もかみ続けること。
上司に怒鳴られた、誰かに嫌みを言われた、
そういった場面を、何かをかみ続けるように、
頭の中で繰り返してしまうのです。

ときには、数週間にもわたって思い返すことがあります。
思い返すことで新たな考えが得られればよいのですが、
たいていは嫌な気持ちを追体験し、ますます頭から離れなくなります。

反芻は、心の傷の治りを悪くします。

嫌な出来事を思い出すたび、
かさぶたを無理やり剥がしているようなものですから、
当然、傷はどんどん悪化します。

ともかく、簡単にクセになり、
しかもその代償が大きいのが反芻です。

反芻は
最近の研究によって「心身にさまざまな害をもたらす」
ことが明らかになっています

うつ病、アルコール依存症、摂食障害の危険が増し、
精神的、肉体的なストレス反応が増加することによって
心血管疾患リスクが高まることも分かっているのです。

「話すこと」は必ずしも安全な“手当て”ではない

「苦しいときは話すことが大切」と多くの人は思うはずです。
心理療法でもこれまで、
「話す」ことがなによりの治療になると考えてきました。

実際にカウンセリングでもよく、
「頭から離れない出来事をもう一度話してみてください」と
言われることが多いはずです。

もちろん、話すことが実際に治療になる場合もあるのですが、
やり方を間違えると、
かさぶたを剥がすような結果になることがあります。
忘れたいのにまた辛いことを思い出さねばならず、
これが思考のループをむしろ強めてしまうのです。

たとえネガティブな考えを修正するためであっても、
嫌な気分や考えを思い出させることは
危険をはらんでいるということです。

「物理的な距離を置くと、感情的にも距離を置けます」

いろいろな手当ての方法がありますが、
なかでも思考のループの影響力を弱める方法として
「視点を変える」というやり方をお勧めしています。

嫌なことを考えるとき、
通常は「自分視点」でものを見ています。
自分の目で見たままの光景を見て、
自分が感じたことをありありと追体験する。
すると、実際にそれが起こったときのように感情が高ぶってしまいます。

そんなときにやってみてほしいのが他者視点」というやり方です。555882

〈他者視点〉のエクササイズ

  1. 静かな環境で、楽な姿勢で座るか、横になる
  2. 目を閉じて、嫌な出来事の最初のシーンを思い浮かべる
  3. 視点を後ろに引いていき、視界の中に自分の姿が入ってくるところまでズームアウトする
  4. さらにズームアウトして、遠くのほうから自分を眺めている感じにする
  5. そこで視点を固定し、距離を保ったままで起こった出来事をリプレイする。
    通りすがりの他人になったつもりでそれを眺める
  6. 嫌な出来事を思い出したときは、つねにこの他者視点に切り替えるようにする

 

この「他者視点」は、
嫌な出来事を、その相手と自分を含めて距離を置いて
「絵」のようにして眺めるのがポイントです。

物理的な距離を置くと、感情的にも距離を置くことができるのです。

嫌なことを思い返すとき、同時に、肩がカチカチに固まったり、
おなかが痛くなったりすることがあるかもしれません。
そんなときにもこの他者視点を用いると、
ちょうど首から下の部分がすーっと落ち着く感じがします。

私たちは、例えば目の前に怒鳴っている上司がいるとすると、
それを映画の全画面で見ているような感覚に陥ってしまいます。
しかし、ズームアウトして、距離を置くと、同時に心も落ち着くのです。

他者視点を使うと、
嫌なことを思い出すときの血圧の上昇が抑えられる
ことが分かっています。670481
また、その実験から1週間経過した時点でも、
思考のループ傾向が明らかに減り、
思い出したときの心理的苦痛もかなり軽くなる、
つまり「つらい記憶を薄める」働きが得られることが分かっています。

集中することが必要です。一人きりになれる場所、
静かな環境で、できれば部屋も暗くして行うと、
集中しやすくなります。
何回か行うと、心が落ち着いてきます。
例えば5分間行って、
5分前と比べて気持ちがどうなったかな?と感じてみるのもよいでしょう。

重要なのは、急がないこと。
スナップショットではなく、
映画館で映画を眺めているような感覚で、
ゆっくりとイメージしましょう。

職場ではなかなか難しいと思いますが、
例えばトイレの空間ならば
静かに集中できるかもしれませんね。

「ただ話すことだけで
思考のループが解決するわけではない」ということが
心理学で分かってきたこと、
それを解決する一つの方法が
「他者視点」で物事をとらえなおしてみる、
ということがよく分かりました。

自動再生するように、出来事を反芻し続けるのは良くないですが、
自分の心を見つめ直す「内省」は有益です。

有害な繰り返しをやめ、有益な内省に変えることで、
ネガティブな思考のループから抜け出しやすくなるのです

この手当ての方法をぜひ覚えてください。

◇     ◇     ◇

ガイ・ウィンチ(Guy Winch, Ph.D.)さん
心理学者、マンハッタンで開業し、20年以上にわたって心理療法を実践している。
講演家としても定評があり、
TEDトーク「感情にも応急手当が必要な理由」は
430万回以上(2017年2月時点)視聴され、
「2015年で最も人気のトーク」にランクインした。
出典:日経Gooday

http://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/17/022300017/030100003/?waad=abLZtgAl