食道がんは外科的手術が非常に難しく、
進行すれば大がかりな手術となることもある。

 

どのような生活習慣が食道がんを招くのか、

 

そして、早期発見のカギはなにか?


食道がんの原因は、お酒と熱い料理

日本人が食道がんになる
第一の原因は、アルコール。

食道がん患者の7~8割を
男性が占めているのも、
仕事の付き合いでお酒を飲む機会が多いことが
影響すると思われます。

 

食道がんは、
飲酒で顔が赤くなる「フラッシャー」の人が
発症しやすい傾向にあります。

 

特に危険なのは、
「昔はすぐに顔が赤くなったのに、
付き合いで鍛えられて飲めるようになった。
今はワイン1本でも平気」という人。

 

フラッシャーなのに飲めてしまう人
毎日飲む生活を続けると、
食道がんのリスクが上がります。

 

約半数の日本人がこのタイプに該当。

 

 また、口から食道に至る粘膜は
高い濃度のアセトアルデヒドにさらされます。

このことも食道がんの発生に関与するといわれています。

 

食道がんになる
第2の原因は
食道のやけどを起こすような熱い食べ物です

 

食道粘膜の表面を覆う
「扁平上皮(へんぺいじょうひ)」は薄いので、
やけどを繰り返すと

扁平上皮のがんを引き起こします。

 

また、欧米に多い食道がんは、
逆流性食道炎(*a)が原因になることが
多いのです。

 

食道がんの場合も初期症状はほとんどなく、
無症状に近い状態です。 

 

無症状のうちに内視鏡検査を受けなければ、
早期発見は困難です。

 

早期なら内視鏡治療が可能、進行すると大がかりな手術に

 

 食道がんに対する主な治療 (出典:日経Gooday)

 

治療の特徴

内視鏡的粘膜下層剥離術
(Endoscopic submucosal dissection: ESD)
  • がんが粘膜にとどまる早期がんに対して行う
  • 口から内視鏡を入れてがん周辺の粘膜を切開し、粘膜下層をはぎ取るように切除する。外科的手術と違って患者の負担が少ない
  • がんの浸潤が深くリンパ節転移の可能性がある時、内視鏡ではリンパ節を取り去ることができない
外科的手術
  • 最も多い胸部食道がん(下記図1)の手術では、
    肋骨の間を切開して、肺や心臓の奥にある食道のがんを切除し、
    さらに首も開いてリンパ節を取り除く。
    そのため手術の規模も、患者の負担も大きい。小さい傷の手術も行われている
化学療法
(抗がん剤)
  • 点滴注射・内服によって行う。
    抗がん剤が血液を介して全身を巡り、全身のがん細胞を攻撃する
  • 健康な細胞も攻撃するため、吐き気、倦怠感などの副作用が出やすい
放射線療法
  • 全身に向けて行う化学療法と違い、局所だけに作用する
  • 化学療法と同様、副作用がある
  • 化学療法と併用することも多い

*a 逆流性食道炎:胃酸などが逆流して食道の炎症を起こす。
これを繰り返すと、食道の粘膜が変質した状態

(バレット食道と呼ばれる)となり、

バレット食道がんと呼ばれるがん発生のもととなる。
近年、日本でもこのタイプのがんが増えつつある。

 

 

食道がんの手術は
食道が手術しにくい
場所にあるので大がかりです

 

図1 食道がんができる場所

http://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100023/080900038/zu1.jpg?__scale=w:530,h:363&_sh=0480d20830

(参考資料:国立がん研究センターがん対策情報センター.
がん情報サービス. 食道がん)

 

胃がんや大腸がんの手術は約3時間で、
手術室で呼吸器を外して病棟に着く頃には
意識もはっきりしています。

 

でも、食道がんの手術は5~7時間かかるうえ、
すぐに病棟には行けず集中治療室に運ばれます。

それほど手術の規模が大きく、
患者さんの負担も大きいのです。

 

このため手術を行うかどうかは、
患者の体力と、手術侵襲との
兼ね合いで決めます。

 

手術しない時と手術した時、
どちらのほうが生命のリスクが高いかを考え、
手術しないほうがいい場合には
放射線や抗がん剤による治療を検討します。

 

放射線は、手術に比べて
体への負担が少ないという意味では
無難な治療です。

 

早期発見のポイントは内視鏡検査

年1回ある自治体や会社の健康診断は、
残念ながら早期のがんを狙って
拾い上げるタイプの検査ではありません。

 

そのため、食道がんを早期発見するには、
胃の内視鏡検査(上部消化管内視鏡検査)を
自主的に受ける必要があります。

 

食道がんを早期の段階で見つけるなら、
内視鏡検査が一番です。

 

 

井上晴洋(いのうえ はるひろ)さん
昭和大学江東豊洲病院消化器センター長・教授

専門は消化器内視鏡診断学・治療、食道・胃外科学。

出典:

http://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100023/080900038/?waad=abLZtgAl