運動はがん予防になるか?

1.運動とがん予防

「運動すると健康にいい」と誰しも漠然とは思っているのではないだろうか?確かに様々な効果が紹介されている。

ここでは、運動とがん予防効果の関係について、肯定的ないくつかの統計データを紹介するとともに、その理由についての「仮説」をご紹介します。

2.統計と研究

⑴運動の効果:日本

・2017年:ある女性泌尿器科・泌尿器科クリニック院長の研究成果:

研究では、前立腺がん患者102人について、8年間にわたって死亡率を調査した結果、月間120km以上ウォーキングするグループでは前立腺がんによる死亡者はゼロだった。(*1)

・2008年:国立がんセンターの研究成果:

国立がん研究センターが45~74歳の約8万人について追跡した研究では、
1日の身体活動量(運動量)でたくさん運動している人は
数種類のがんの発症リスクが低くなっていた。(*2)

⑵運動の効果:USA等

・2016年:USA、スウェーデン、フランス等研究機関:

米国で19~98歳の約144万人を対象にした大規模な疫学調査では、
週5日以上、ウォーキングなどの運動を行っている人は、ほとんど運動しない人に比べて、食道がんなど数種類のがん発症リスクが低かった。(*3)

・2009年:Dana Farber Cancer Institute:

転移のない大腸がん男性患者668人について20年間観察した研究では、20年間で258人が死亡し、うち88人は大腸がんが原因だったが、運動量が多いほど死亡率が低かった。(*4)

・2011年:ハーバード大

前立腺がん患者2750人を追跡調査した米国ハーバード大学の研究では、
「週3時間未満のウォーキング」しかしていない人たちと比べると、
「週3時間以上のウォーキング」をしている人たちの
がん再発・転移、死亡のリスクは約半減していた。(*5)

3.仮説:なぜか

『テストステロンが筋肉で使われるから』

前立腺がんはテストステロンをエサにして増殖することがわかっている。このテストステロンが運動で筋肉に使われることによって前立腺がんのエサになる量が減るからではないかとするものです。

同様の仮説が大腸がんについてあります。

大腸がんの場合は、IGFという細胞増殖効果のある物質が筋肉に使われてがんを抑制するのではないかとするものです。

しかし、運動とがん抑制というのは、いまだにメカニズムがほとんど分かっていません。

ヘビースモーカーが全員がんになるとは限らないように、運動していれば絶対がんにならないとは言い切れない。

もっと多くのサンプルを集める必要がある。

参考:

(*1)http://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100018/110200044/
(*2) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18599492
(*3) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27183032
(*4) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20008694
(*5) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21610110